全員が相続放棄をしたら家はどうなるか
1 相続放棄とは
相続放棄とは、亡くなった方(被相続人)の財産を引き継がないことを意味します。
相続放棄は、原則として被相続人が亡くなったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に対して申述しなければなりません。
被相続人に借金等の負債や税金等の滞納などがあった場合に、それらの不の財産を引き継がないために相続放棄の手続きをとる方や、被相続人との関係が疎遠であり、相続について関与したくないといった理由で相続放棄をされる方もいらっしゃいます。
2 不動産の相続をしないために相続放棄をする方も
被相続人に借金等の負債はないが、古い家が残っているという場合もあります。
相続人が被相続人所有の家に住むのであれば、家の所有権を相続して引き継ぐことになると思いますが、相続人は遠方に住んでいて、今後被相続人所有の家に住む予定もないという場合もあるでしょう。
将来的に住む可能性もなく、遠方の家の管理をしなければならないというのはかなり負担が大きいことから、このような場合には相続放棄を検討してもよいかもしれません。
3 相続人全員が相続放棄したら家はどうなるか
では、もし上記のような理由で、相続人全員が相続放棄をした場合、被相続人所有の家はどうなるのでしょうか。
民法上、相続人船員が相続放棄をした場合、被相続人の家は国庫に帰属する(国の財産になる)ことになります。
4 相続人全員が相続放棄した場合の家の管理責任
相続人全員が相続放棄をした後の被相続人の家について、例えば老朽化によって外壁が壊れ、隣家を破損させてしまった場合や、隣人が怪我をしてしまった場合、相続人は管理責任を問われないのでしょうか。
⑴ 令和5年4月以前の場合
相続人全員が相続放棄をした場合、被相続人の家は国庫に帰属することになっていますが、相続財産管理人(※民法改正によって、現在は相続財産清算人に名称が変わりました。)を選任するよう申立てを行い、国に家を引き継いでもらわなければ、管理責任を免れることはできないこととされていました。
しかし、相続財産管理人の選任申立ての手続きは煩雑であり、裁判所に納めるお金(予納金)も20万円~100万円程度かかるため、相続財産管理人の選任がなされず、事実上放置されてしまうケースもありました。
⑵ 令和5年4月以降
しかし、令和5年4月の民法改正によって、相続放棄をした人の管理責任について、「現に占有している」場合に、相続財産清算人に財産を引き継ぐまでの期間、管理責任を負うことが明記されました。
したがって、被相続人が実家で一人暮らしをしていたが亡くなってしまったという場合、遠方に住む相続人がその実家の占有をすることなく相続放棄をした場合には、管理義務を負うことはないことが明確になりました。
他方で、被相続人と同居していた等、実家を占有していたと評価される場合には、実家の管理責任を免れるためには、相続財産清算人の選任申立てをして、財産を引き継ぐ必要があります。
5 相続放棄のご相談は、弁護士法人心まで
相続放棄をすることで、家の所有権を引き継がないことは可能ですが、管理責任を負わなくて済むかどうかは別問題ということになります。
被相続人の所有する家があり、相続放棄をお考えの方は、弁護士法人心までご相談ください。